不貞(浮気、不倫)行為に関する慰謝料請求

不貞(浮気、不倫)行為に関する慰謝料請求

ここでは、不貞(浮気、不倫)行為に関する慰謝料請求に関する具体面に少し踏み込んで解説します。
実際に争う前に必要な知識を事前に確認することは大切です。

1. 慰謝料請求の性質とその成立要件

慰謝料請求は、民法上の言葉で言うと、「不法行為に基づく損害賠償請求」ということになります。この「損害」のうちの精神的苦痛に関するものが、慰謝料というわけです。
不法行為の成立要件は、

① 権利利益に対する(違法な)侵害行為
② 故意過失
③ 損害の発生
④ ①と③の間に因果関係があること
⑤ 責任能力ということになります。

2. 妻の立場からみて、夫(A)が第三者(B)と不貞に及んだ場合

たとえば、妻の立場からみて、夫(A)が第三者(B)と不貞に及んだ場合、妻は誰に慰謝料請求をすることになるのでしょうか。

Ⅰ. 不貞行為そのものは、AとBが2人で同じことをしているので、民法上の共同不法行為になり、妻は、Aに対してもBに対しても、あるいは両方に対して、不貞行為に基づく損害賠償請求が可能です。

Ⅱ. 不貞行為によって夫婦が離婚になった後の争いの場合、不貞行為そのものではなく、離婚慰謝料を請求する場合がありますが、この場合の相手は、夫であるAのみになります。

3. 具体的にどのような場合に、この慰謝料請求が可能なのか?

それでは、具体的にどのような場合に、この慰謝料請求が可能でしょうか。

Ⅰ. まず、「不貞行為」とは、一般的な言葉使いとしては、精神的なものも重視されますが、不法行為の成立を判断する局面では、基本的には「性交渉の有無」が問題になります。従って、いかに精神的に結び付いていようとも、プラトニックな関係では不法行為は成立せず、逆に性交渉に及べば、たとえお金で割り切った関係でも、不貞になる可能性があります。

Ⅱ. 離婚慰謝料の局面では、「その不法行為により婚姻関係が破綻した」という関係が必要になります。従って、婚姻関係が未だ破綻していなかったり、別の理由で既に破綻していた場合等は、争われるリスクが高いです。

Ⅲ. 以上の事実があったとしても、裁判等で争いになる場合を考えれば、「基礎になる事実が証拠により立証できること」も大切です。後に補足します。

4. 不法行為は原則「3年」という比較的短い期間

なお、不法行為は原則「3年」という比較的短い期間で、消滅時効にかかります(時効で法的に請求できなくなる。但し純然たる精神的損害だけでなく、身体の損害といえる症状等が認められる場合、改正法により5年とされる可能性はあります)。
原則として、請求権を行使できるようになる、「損害と加害者を知ったとき」、つまり不貞が発覚したときから、この期間の計算は始まりますので、注意が必要です。
時効完成ぎりぎりでも、専門家なら対処できる可能性がありますので、そのようなときは、速やかにご相談下さい。
また、逆に、時効になっていなければ、既に離婚されている場合でも、請求可能な場合もあり得ますので、このような場合もご相談下さい。

5. 不貞行為の証拠は、裁判で認められるものと「普通に考えて証拠になるもの」とは大差はない

不貞行為の証拠ですが、裁判で認められるものと、「一般人が普通に考えて証拠になるもの」との間に、それほど大差はないと思います。

Ⅰ. 調査会社の報告書
これは、私達弁護士が、この種の争いでよく目にするものです。有力な証拠になることが多いですが、業者に「当たり外れ」もあると言われ、また、それなりの費用がかかるようです。

Ⅱ. 写真、動画
写真、動画は客観的な証拠として、役に立つ事が多いです。①性行為時のものや、②ラブホテルへの出入りなどがよく見受けられます。①はある意味決定的ですが、不貞当事者のスマホ等からの流出が多いと思われ、入手過程が問題になることもあります。②は入る時点と出る時点の両方のものがあって、時間の経過も立証できることが望ましいです。なお、「ホテルには行ったが行為はしていない」という反論が出ることがありますが、ラブホテルであれば、通常通らない言い訳です(自宅やビジネスホテルだと、微妙になるケースもあります)。

Ⅲ. メール、LINE、SNS
これらも、内容によっては、有力な証拠になることがあります。

Ⅳ. 証人、目撃者等
これらは「人証」と呼ばれますが、嘘を付くこともあるので、ⅰ~ⅲよりは、一般的には証拠力は弱いです。

6. 慰謝料の額等

これは、事案により、相当幅があるので、具体的事案を弁護士に示して相談していただいた方が、より確度の高い情報を提供できると思います。ただ、一般的な考慮の要素を列挙しておくと、
① 離婚に至ったか否か
② 不貞の期間、頻度、回数等
③ 配偶者と不貞相手のいずれに積極性があったか
④ 婚姻期間
といった点がよく考慮されます。不貞相手側が妊娠した場合、かなり大きな要素になります。

ごく大ざっぱに言えば、離婚に至ってない場合で、50万~150万円、離婚に至った場合で、100万~300万円というのが裁判での傾向です。

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