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婚姻費用に関する最近の裁判例(相談例)

【相談例】

妻とは約2年前から別居していて、妻は、従前から私に対し、離婚を求めてきております。
(離婚協議は今も継続しておりますが、離婚の条件が折り合わず、協議は継続中となっています)

約1年前に妻から婚姻費用分担調停が申し立てられ、3回の調停期日を経て、妻と一緒に暮らしている子供の養育費も含めて、私の方から月7万円の婚姻費用を支払うことに決まりました(調停成立の翌月から、きっちり支払っております)。

1 私は、妻の言う離婚理由に納得できず、また、怪しい素振りもあったので、調査会社を使って調査し、妻が私以外の男性と同居していることを突き止めました。
男と暮らしているような妻に対しても、婚姻費用を支払う必要はあるのでしょうか。

【回答】
かつては、婚姻費用は、夫婦としての扶養義務に基づいて支払義務を負担するもので「良い悪い」関係ない、と説明されることもありました。しかしながら、平成17年に一定の条件のもとではありますが、有責者からの婚姻費用請求を信義則に反するとした最高裁判例が出て以来、有責者、つまり自ら不貞をしたりして、別居の原因を作出した側からの婚姻費用請求が排斥されるケースも見られます。
従って、このケースも、妻がその男性といつからの関係なのか、その男性との関係こそが別居の原因なのか、などを見極めてのことにはなりますが、夫側としては婚姻費用の支払いを拒みうる場合もあり得ることになります。この点近時の裁判例(大阪高裁平成28年3月17日決定)も、相手方の不貞行為を認定し、別居の原因は主として又は専ら相手方にあるとした上で、相手方からの婚姻費用分担請求は子らの養育費相当分に限って認められるべきとしています。

2 妻が出て行って私も寂しくなり、出会い系で知り合った女性と性的交渉を持ってしまいました。その女性は妊娠し、私の子供を産みました。そして女性から、求められて、子供を認知し、養育費も支払うことになりました。
この養育費の負担により、私の家計はより苦しくなったのですが、妻に対して支払う婚姻費用の減額を求めることができるでしょうか。

【回答】
いきさつはどうであれ、別居していても法的には夫婦であり、夫は直ちに貞操義務を免れるわけではないですから、夫の言い分を認めることに対しては「不貞を奨励するのか」との批判もありそうです。
しかしながら、養育費同様、婚姻費用の額の算定も、現行の家裁実務では、双方の収入を基準として、家族が同居していれば、子と配偶者のために費消されていたはずの生活費がいくらかを計算し、これを夫婦双方の収入割合で按分する、という「算定表」による計算が原則となります。もっとも、基本的には、その大前提として、配偶者や子に対する扶養義務(生活保持義務)があるので、権利者、つまり、このケースの夫側に扶養義務の対象となる家族が増えれば、妻側に回る婚姻費用の減額要素になることも理屈に適っているとも言えるのです。
近時の裁判例(名古屋高裁平成28年2月19日決定)は、「非嫡出子に対する扶養義務を果たすために相手方に対する婚姻費用の減額を認めることは,申立人の不貞行為を助長ないし追認するも同然である」という観点よりも、「非嫡出子であっても、申立人から等しく扶養を受ける権利を有する」という点を重視して、減額を認めています。