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養育費の増額(相談例)

【相談例】

養育費を合意で定めて、夫と離婚した。

当時は夫の収入にも余裕がなく低額で我慢したが、今回夫が、資産家の娘と再婚した。

夫の生活も余裕があるようなので、養育費の増額を求めることはできないか。

【回答】

夫婦が離婚する際に未成年の子供がいる場合は、その親権者をいずれにするか定めます。その結果、多くの場合親権者となった方が現実に子供の面倒をみて育てることになりますが(「監護」といいます)、子どもを監護する親は,子どもを監護していない親に対して,子どもを育てていくための養育に要する費用を請求することができます。この費用のことを「養育費」といいます。

養育費は、離婚して親権者や監護者でなくなっても、親として子に対する扶養義務自体は残ることを根拠としますので、養育費の支払義務は,子どもが最低限の生活ができるための扶養義務ではなく,それ以上の内容を含む「生活保持義務」といわれています。生活保持義務とは,自分の生活を保持するのと同じ程度の生活を,扶養を受ける者にも保持させる義務のことです。つまり,養育費は一緒に暮らしている場合と同様の生活水準を保てるように支払っていくべきものであるということです。

養育費の具体的金額は、「一緒に暮らしている場合と同様の生活水準」という見地から算出するのですが、現在の家庭裁判所の実務では、基本的に、双方の収入を基礎に、「算定表」というものを用いてこの算定をすることになっています。収入がわかれば統計資料等から、一般的な支出や、収入の家族への分配率は概ね計算できる、という考え方です。ただ一般的な場合と異なる支出があることが明らかな場合は、それも考慮することになります。

ところで、一度合意等で養育費が定められた場合であっても、後に、金額を増やしたり減らしたりすることができる場合があります。すなわち、民法880条は「扶養にかかる協議または審判があった後事情の変更が生じた時は、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消しをすることが出来る」と定めており、当初は予測できないような「事情の変更」により、金額を変更することを認めているのです。

本件のように養育費を支払っている親が再婚しても、子供に対する扶養義務自体は当然残ります。

それでは、「元夫が資産家の娘と再婚した」というのは、養育費の増額をみとめるべき「事情の変更」といえるでしょうか。

再婚自体は全く予想できない事実ではありませんが、もとの合意時からすれば不確定な事実ですから、再婚により、扶養家族の増加が生じるなどして、家計の現実の収支に影響する場合は、「事情の変更」にあたる場合もあり得ます。

しかしながら、通常は、再婚すると、再婚相手に対し新たに夫婦間の扶養義務を負いますので、可処分所得の減額要因となり、むしろ養育費の減額要素になります。そして、本件の場合、元夫の再婚相手が「資産家の娘である」ことは、ただちに、その再婚相手本人や元夫の収入に結び付くわけではありません。

抽象的には、元夫が困窮したとき再婚相手の親の援助等を受け得る可能性はあるのかもしれませんが、やはり、恒常的な収入の増加とみて養育費の増額を認めさせることは、難しいのではないかと思います。